2012年04月25日

エムブリヲ奇譚 山白朝子 メディアファクトリー



goods_026.gif 山白朝子初読。短編集です。

goods_020.gif 収録作品
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 エムブリヲ奇譚
 ラピスラズリ幻想
 湯煙事変
 〆
 あるはずのない橋
 顔無し峠
 地獄
 櫛を拾ってはならぬ
 「さあ、行こう」と少年が言った
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夏目漱石『夢十夜』

泉鏡花『夜叉ヶ池』

恒川光太郎『夜市』


このあたりがツボな自分にとって、まさに直球でタイプな内容の作品でした。

年齢不詳、長い髪に整った顔立ちをした奇妙な道中記作者・和泉蝋庵。彼にはおかしな迷い癖があり、迷うはずのない道で道に迷っては、おかしな場所へとたどり着いてしまう。博打好きの男・耳彦とともに旅する蝋庵のエピソード。
時に優美で、時に恐ろしく、どこまでも幻想的な物語の数々。


シナリオの優しすぎず、厳しすぎず、のバランスが絶妙です。
これからも作品を追いかけてゆきたいと思います。
タグ:日本の小説
posted by ウサミ at 21:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | |

人生なんて無意味だ ヤンネ・テラー著/長島要一訳 幻冬舎



goods_026.gif デンマークの作家、ヤンネ・テラーの著書。

テーリングの中学一年生の少女、アグネス。夏休み明けの学校で、ピエールはクラスメートたちに言葉の爆弾を投げつけ、そして去って行った。「人生は無意味だ」との彼の告発を受けて、みなが動揺する。学校をやめて、自宅そばのスモモの木の上を新しい居場所にしたピエールを、みなは憎んだ。彼の言葉を否定してやるために、一同が思いついたことは「人生は無意味じゃない、意味のあるものを集めて、ピエールに見せつけてやれ…」。

心温まるいい話の路線かと思って読みました。今考えれば笑うしかないほど甚だしい勘違いです。
これは、ひとことで言うと、『愛ではなく、憎悪の物語』なのでした。

思春期特有の不安定な精神状態、大人の世界にも共通する群集心理などが淡々と綴られてゆきます。客観的に見て公平でも公正でもない行為が当たり前に認められてゆくさまなど、生々しい部分も多いです。

作品の本質から考えて、的外れな意見なことは承知のうえで。
人生はすべて無意味。これはまさに言葉の爆弾のようなもので、むやみに周囲の人々に投げつけていいようなものではない。
という、そのことをきちんと理解できなかったピエール少年が残念でなりません。
タグ:海外の小説
posted by ウサミ at 21:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | |

夏天の虹 高田郁 角川春樹事務所



goods_026.gif みをつくし料理帖、シリーズ第七弾。

短編集です。全四編を収録。
goods_020.gif 収録作品
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冬の雲雀
忘れ貝
一陽来復
夏天の虹
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想い人・小松原との話に区切りがつけられた。気持ちを新たに料理と向き合っていく澪だったが、多くの困難がまたしても彼女に襲いかかってくる…。

読みながら、澪ちゃんがんばってーと心の中で応援するくらいしかできないのが歯がゆいですね。
心配事、苦労のたえない澪ちゃんですが、今作でも精一杯がんばってます。
posted by ウサミ at 21:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | |

裏返しの男 フレッド・ヴァルガス著/田中千春訳 東京創元社



goods_026.gif フレッド・ヴァルガス著。アダムスベルグシリーズ、第二弾。

フランス奥地の村に異変が起こった。これまで見たこともない巨大な狼が現れ、羊を殺したのだった。激しく動揺する羊飼いたちと共に、ひとつの噂がたちのぼる。狼男が現れ、羊を殺しているのだろう…。村の女傑、女牧場主のシュザンヌがこの一件に関わったことで、彼女の友達としてカミーユも事件に巻き込まれる。改造した家畜運搬車のハンドルを握り、美女カミーユが険しい山道をひた走る。車中には、決然とした風情の古参羊飼いハリバン。シュザンヌの養子で"アフリカのプリンス"ソリマン。老人と黒人青年と美女、奇妙な三人組の"ロード・ムーヴィー"がはじまり、カミーユを愛するアダムスベルグ警視までもが関わりあうこととなり…。

良く書けている作品だったと思います。何でもアリなオカルトものかと思いきや、きっちり説明のつくかたちで事件が終幕を迎えます。
個人的に本作の最大の魅力は、おかしなトリオのふしぎな旅程を描いた部分のように感じました。(ちなみに、最終的にはアダムスベルグまでもが加わって、謎の四人組にまで成長します 笑)
推理小説としてもとんでもない飛び道具的な展開はなくきちんと楽しめるようになっていますし、全体のバランスがとれた良作だと思いました。
タグ:海外の小説
posted by ウサミ at 21:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | |

紙の民 サルバドール・プラセンシア著/藤井光訳 白水社



goods_026.gif サルバドール・プラセンシア初読。

土星は、彼らの世界を覗いていた。絶対者として、完璧な司令官のように彼らの頭上に君臨するのだ。けれども、覗かれている人々は土星の存在にきづき、抵抗ののろしを上げた。フェデリコ・デ・ラ・フェはたまらない悲しみを抱えていた。彼には娘のリトル・メルセドが残された。だが愛する妻、メルセドは行ってしまった──。農夫の暮らしをやめ、コンクリートの街で花摘みの生活に入るフェデリコ。リトル・メルセドは紙でできた最後の女性のために名前を与える。メルセド・デ・パペル。全てを予言するベビー・ノストラダムスはリトル・メルセドに土星から心を隠すための技を伝授する。土星に対する抵抗勢力EMFの台頭。土星は孤独で、これは恋にまつわる物語である…。

独自の世界観を持った作品でした。
ただ、最終的に若者の恋愛譚が表出してくるので、これだけ駒を動かしておいて、最後にはソレ?ってちょっとものさみしい気持ちにもなったり(笑)。

小説、書物という固定形態を揺さぶるという意味ではマーク・Z・ ダニエレブスキーの著書『紙葉の家』↓なども連想されます。


序盤の雰囲気などはとても好きだったのですが、最終的に、内容そのものへの興味が削がれてしまったのが残念です。
終わり方もシュールさとキュートな味わいが合わさったもので、魅力的でした。

著者はまだ若い方ということなので、もっと年をとってから書いたものが読んでみたいように思いました。
タグ:海外の小説
posted by ウサミ at 21:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | |