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TVとは違った面白さがあった
地味に日本を助けるオトコ。
文学のエンターテインメント性を十分に感じさせる
ドラマよりも5割増しで面白い
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大学の研究室に居辛いムードをつくってしまい、短期間という約束ながら女子高の常勤講師として外に出されることになった「おれ」。ところが初日から反抗的な生徒・堀田といざこざを起こしてしまい、ぎくしゃくしたムードでのスタートとなる。摩擦を起こしながらも懸命に教職をつとめようとしている「おれ」の前に、二頭の御供を引き連れた雌鹿が姿を現し、そして──。
これはかなりファンがつきそうな作風ですなぁ。と感心しつつ、楽しく読みました。
表紙のイラストと作品の内容がぴったりそぐっており、相互に良い影響を与えているように思います。
現代っぽさも含みながらやたらとマンガチックではないギリギリの線で丁寧に描かれたイラストなので、老若男女誰にでも抵抗なく受け入れられるであろう画風。
本体の小説にも同じことが言えるように思えます。
やたら古臭いわけではないのに、むやみに現代っぽさを出そうとしている様子もない。ごく自然な調子で、さらりと「あたりまえの現代の日常」っぽさを表出してみせる腕前がすばらしい。
一歩間違えるとありがちな若者にしか受けないライトタッチの小説に陥りそうでありながら、紙一重のところでうまく踏みとどまっている。
その決定的な差は、やはり全体にたちこめる「絶対的なリアリティ」をつくりだせる力量にあるのだというのが私見です。
たとえば第一章、ただの六頁からなるごく微量な文章。やたら冗長に書き込まれているわけでもないさらりとしたこれらの文章から、主人公「おれ」、微妙な立場にある「教授」、さらにはほとんど言及されていない「助手」の人となりまで浮かび上がってくる、におい立つような文章。
では、ただひたすらにリアリティがあるだけの作品なのかというと、他方ではトンでもなくトンでるストーリーの作品でもある。
そこがまた魅力的です。
鹿に狐に鼠に神様に古代の姫君に大なまずにサンカクに………。と、するっと「和」やまとのモチーフを織り交ぜながら語られる不思議な世界。
全体を通してのムードも、様々な摩擦もありながら、最終的には心の温まるようなやさしさが篭められており、読了感は極めて爽やか。
この不思議な味わいが作家としての個性なのだから、このムードが好きならファンになっちゃうよなぁ、と納得しました。
個人的に、ファンとまでは申しませんが、かなり好みです。
また(これは本編に直接関係ありませんが)栞の目に染みるほど爽やかなブルー、これがまた、良いのです。
他の作品も読んでいきたいと思います。楽しみです。




